EC2 eVo black
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問い合わせ先:(販売代理店)
実勢価格:6500?7000円前後(※2012年5月24日現在) 「シリアスゲーマーのための製品」をコンセプトに,PC用のゲーマー向け周辺機器をリリースしてきているZOWIE GEAR。そんな同ブランドから4月13日に国内発売された,異なるサイズのワイヤードマウスで,世界的に有名な元プロゲーマー,Emil“HeatoN”Christensen氏が製品開発に関わっている「EC1 eVo black」「EC2 eVo black」から,今回は“小さいほう”となるEC2 eVo black(以下,EC2 eVo)を取りあげてみたい。
2010年8月中旬にZOWIE GEAR初のマウス製品として国内発売された「」のリニューアル版という位置づけだが,その実力はどれほどのものだろうか。
EC2から形状そのものには変化なし懸案だった「スクロールホイールの仕様」には改善が
さっそく,外観と握りをチェックしていこう。
製品名には「black」が含まれるが,発売時点では黒モデルしか存在しない EC2 eVoは左右非対称の形状で,右手での操作を前提とした製品となっている。実測サイズは67(W)×122(D)×42(H)mmで,EC2とほぼ同じ。見た目と測定誤差を勘案するに,「金型はEC2とおそらく同じ」と述べてしまっていいだろう。ECシリーズの“大きいほう”となるEC1の同70(W)×128(D)×43(H)mmと比べると,一回り小さい。
重量はケーブル込みで実測約137g。ケーブルを秤からどかした参考値で94?99g程度となっている。
EC2(いずれの写真でも右側)と比較したところ。一見しての違いはZOWIE GEARロゴの色くらいしかない こちらはの比較用リファレンス「G5 Laser Mouse」(型番:G-5T)と並べたところ。全体的に一回り小さな印象だ
サイドボタン以外のカバー部はすべてツヤ消しのラバー加工がなされており,手に汗握るような戦いの後でも,指紋のベタつきが気になりにくい。ただその代償として,EC2の本体両側面の光沢加工によって得られていた「ペッタリしたフィット感」が失われたことは,指摘しておく必要があるだろう。テストにあたって直前までEC2を使っていた筆者の場合,最初は,ゲーム中にマウスをマウスパッドの外側から中央へと大きく戻すとき,マウスを浮かしたタイミングで掌から滑り落ちそうな違和感に見舞われている。
もっとも,2日ほど使っているうちに身体も慣れ,現在は気にならず利用できているので,店頭で両側面の握り心地を試して「あれ?」と思っても,この点は心配ないと述べてよさそうだ。
マウス後方から向かって右側面は,軽くスカート状に広がっており,小指と薬指を乗せやすい。これにより,「つまみ持ち」や「かぶせ持ち」だけでなく,「BRZRK持ち」でも自然に指を置けるようになっている。
上下段とも,左がつまみ持ち,中央がかぶせ持ち,右が筆者独自のBRZRK持ちだ。どの持ち方でも違和感はない
EC2 eVoのボタンは,握った状態で操作できるのが5個(上)。下の写真でセンサー部の右上に見える細長いボタンがDPI設定用である ボタンは左右メインとセンタークリック機能付きスクロールホイール,そして左サイド×2。別途,本体底面にDPI設定切り替え用ボタンが用意されるため,5ボタン仕様とも,6ボタン仕様とも言える構成だ。
左右のメインボタンは上面カバーと一体型になっており,クリック感はマウスの先端部分となるケーブルの根元付近で最も軽く,前後中央部へと指の位置をずらして行くにしたがって少しずつ重くなっていく。
前後に2つ並んだサイドボタンは,マウスを握ったときに親指を干渉しないように湾曲し,位置も高めになっている。筆者を含め,指が大きな人でもサイドボタンを“誤爆”するようなことはまずないと思われ,この点はよくできている。
ちなみにサイドボタンのサイズはざっくりと実測長さ20mm,幅6mm。両ボタンの間隔は同1mmだった。
メインボタンは,個人的に,いわゆるタップ撃ちと呼ばれるテクニックが使いやすかった ボタンのクリック感だが,まずメインボタンは,押下時の「カチッ」という音が大きく,EC2と比べるとスイッチも硬い印象だ。
サイドボタンは,EC2比でスイッチの硬さが多少増しているものの,カチッカチッと小気味よく押せる。ボタン部分の中央だけでなく,端の部分を押しても同じくらいの力加減で入力できる点はEC2から変化なしだ。ただ,EC2 eVoのほうが「スイッチのオン/オフ感」は圧倒的に感じられるので,筆者が気持ちよく扱えたのはEC2 eVoのほうだったとは述べておきたい。
……というわけで,注目のスクロールホイールである。突然「注目の」と言われても,という読者もいると思うが,実のところEC1とEC2には,「スクロールホイールの回し方によっては入力が無視され,スクロールしないときがある」という問題ZOWIE GEARは「仕様」としていたがあった。これがかなりの不評を集めていただけに,eVoモデルでこの点が改善されているのかは,大いに気になるところであり,かつ,改善が期待されるところでもあるのだ。
スクロールホイールはEC2の“仕様”から,挙動が大きく改善した で,実際のところどうだったか。EC2 eVoでは,EC2と比べて,スクロールホイールを回転させたときに発生するカチカチ感が増しており,EC2(やEC1)のときの,霞を掴むような軽さがなくなっている。ノッチ(=マウスの溝)間で前後にスクロールを繰り返しても,問題なく反応する。
この改善により,スクロールホイールのクリック感も大きく変わった。まずEC2と比べると,スイッチの抵抗がわずかに増し,硬くなっている印象がある。ただそれはマイナス要素ではなく,指に力を入れると,EC2よりも早い段階で,カチッという音とともにクリックできるのだ。
ただ,この違いは微妙なものなので,EC2をどれだけ使い込んできたかによって,印象は変わるだろう。ほかのマウスから移行した場合は,とくに違和感もないだけに,「普通」という感想に落ち着くこともあると思われる。個人的には,愛用している「SteelSeries Ikari Optical」と比較して,ノッチごとのカチカチ感が強く感じられ,かなり操作しやすく感じた。
なお今回は,EC2 eVoとEC2とでボタンやスクロールホイールを操作したときの音を比較するムービーを作ってみたので,合わせて参考にしてもらえればと思う。
なお,底面のDPI設定切り替え用ボタンだが,これはクリック感を語るようなものではないだろう。ゲーマー向けマウスの場合,スクロールホイールの近くに設定変更用ボタンが配置されるケースが多いのだが,その点でEC2 eVo(をはじめとするECシリーズ)はマウスの外観がすっきりしている。
もちろん,使用する武器によってDPI設定をその場で切り替えるタイプのプレイヤーからすると,「マウスを持ち上げ,底を自分の側に向けてからボタンを押す」という面倒なプロセスが発生するのでマイナス要素になると思われるが,むしろこの仕様は,そういったプレイヤーをバッサリと切って捨て,「ゲーム中にDPI設定を弄ったりはしないものだ」と主張している感じがしないでもない。
センサーは光学タイプ分解して詳細をチェックしてみる
EC2 eVoは,Windowsのクラスドライバで動作する,いわゆるドライバレスな製品となっている。そのため,自宅以外の場所で使う場合にも,Windowsの環境さえ同じなら,ほぼ同じ操作性を再現可能だ。
その代わり,他社製品の多くで可能な,DPI設定のカスタマイズやボタンへのキー割り当て,LEDインジケータの光り方調整などといったことは一切できない。ユーザーが変更できるのは,DPI設定とポーリングレートの切り替えのみである。
スクロールホイール部のLEDインジケータ光量は抑えられており,ご覧のとおり,周辺の光量を落としてやらないと,瞬時には区別がつきにくい。ちなみに左が赤(450DPI,中央が紫(1150DPI),IXA RMT,右が青(2300DPI)だ DPI設定は,前述したDPI設定切り替え用ボタンを押すごとに,450→1150→2300→450……といった形で切り替わる。そしてこのとき,スクロールホイール部に内蔵されたインジケータLEDの色が,450DPIでは赤,1150DPIでは紫,2300DPIでは青へと変わり,「いま何DPIか」分かるようになっているのだ。「飾りではない」ということなのか,LEDの発光量はかなり抑えられているため,人によっては物足りなく感じられるかもしれない。
製品ボックスの側面にレポートレート変更方法が記載されている 続いてレポートレート(ポーリングレート)だが,EC2 eVoでは,EC1やEC2と異なり,125/500/1000Hzの3段階で切り替えが可能になった。デフォルトでは1000Hzだ。
変更方法は製品ボックスのマニュアルではなく,製品ボックス上とに書かれているので,この点は注意が必要だが,まとめると,変更方法は下記のとおりとなる。
言うまでもないことだが,レポートレートを変更する前には一度EC2 eVoとPCとの接続を解除する(=USBケーブルをPCから抜く)必要があるので,その点はお忘れなく。ゲーム側の仕様によって125Hz設定が必要だとか,PCのスペックがあまり高くないため,できるだけPCへの負荷を下げるべく500Hzしておきたいという人は憶えておくといいだろう。
このほか主なスペックを下記のとおりまとめてみたので,参考にしてもらえればと思う。
●EC2 eVoの主なスペック
と,いうわけで,分解してみよう。今回はEC2も分解し,2製品を写真で比較してみたい。操作感が異なる以上,スイッチ類が異なるのはまず間違いないと思われるが,そのあたりを重点的にチェックしてみたい。
なお,写真の並びはいずれも左がEC2 eVo,右がEC2となっている。
カバーを取り出し,基板部を露出させてみた。スクロールホイール手前にはどちらも「2010.06.28 RevE」というシルク印刷が見えるので,基板の構造自体に変更はないと思われる メインクリック用のスイッチは,EC2がオムロン製だったのに対し,EC2 eVoではHuano製に変わっている。海外メディアの報道によれば,ZOWIE GEAR向けのカスタムモデルだそうだが,型番はスイッチに表記されていない。いずれにせよ,クリック音が大きく変わったのも当然の結果というわけだ。「Huano製スイッチは反応が遅い」と言われることもあるが,少なくとも筆者はテスト中,一度もそういう印象は抱いていない。一方,スクロールホイールボタンのスイッチは両製品で共通となっている サイドボタンもスイッチがEC2から変更されている。ロゴを見る限り,EC2 eVoで採用されているのは,メインボタン用とは異なるHuano製スイッチのようだ EC2 eVoが搭載するセンサーチップはAvago Technologies製の「ADNS-3090」。つまり,「ZOWIE AM」と同じ光学式センサーだ。EC2の「ADNS-3060」からは差し替えられた格好になる レンズユニットには違いが見られなかった センサー盲蜺SBコントローラチップが,EC2では「CY7C64215-28PVXC 1013 A 05 CYP 617381」なのに対し,EC2eVoでは「CY7C64215-28PVXC 1143 A 05 CYP 656100」に変更されていたことも,一応報告しておきたい
※注意
マウスの分解はメーカー保証外の行為です。分解した時点でメーカー保証は受けられなくなりますので,本稿の記載内容を試してみる場合には,あくまで読者自身の責任で行ってください。分解によって何か問題が発生したとしても,メーカー各社や販売代理店,販売店はもちろん,筆者,編集部も一切の責任を負いません。また,今回の分解結果は筆者が入手した個体についてのものであり,「すべての個体で共通であり,今後も変更はない」と保証するものではありません。
マウスパッド15製品との相性をチェック一部製品を除いて相性は良好
分解写真でも判明しているとおり,センサーが変更されたことで,当然のことながらEC2からは挙動が変わってくる。
そこで,現在世に出ているマウスパッドとの相性を確認してみることにした。テスト環境と条件は下にまとめたとおりだ。
●テスト環境
●テスト時のマウス設定
今回用意したマウスパッドは全15製品で,から,新たにARTISAN「隼XSOFT」のLサイズを追加している。またリフトオフディスタンスは,メーカー公称の1.5mmをオーバーしないかをポイントとし,厚さ1mmの1円玉を2枚重ねた状態でも反応するかしないかを調べている。その結果はそれぞれの使用感をまとめたコメントの最後に【 】書きで○/×表記を加えたので,参考にしてほしい。○なら2枚で無反応に,×なら2枚でも反応したという意味だ。
●ARTISAN 隼XSOFT(布系)
相性はかなりよく,気持ちのいい滑りを体感できる。急停止も難なく可能だ。【○】
●ARTISAN 疾風SOFT(布系)
隼XSOFTと比べると布地に抵抗感があるものの,滑り自体は良好。だが,100%の再現性はないながらも,ときおりネガティブアクセルのようなものが感じられた。【○】
●ARTISAN 飛燕MID(布系)
かなりの抵抗感がある一方,滑りそのものは疾風SOFTと同様に良好。ネガティブアクセルはとくに感じられなかった。【○】
●DHARMAPOINT DRTCPW35GR(ガラス系)
ナイトメア。カーソルが飛び飛びになってしまって,マトモに操作できない。【○】
●DHARMAPOINT DRTCPW35RS(布系)
抵抗感が強く,カバル RMT,滑りは弱め。その代わり,急停止させやすい。【○】
●Razer Goliathus Control Edition(布系)
滑るような感覚は得られないが,操作感自体は良好だった。【○】
●Razer Goliathus Speed Edition(布系)
隼XSOFTと似た感覚の滑り具合で,快適に操作できる【○】
●Razer Ironclad(金属系)
「ソールが擦れる」ような印象を若干受けるものの,滑り自体は良好。かなり高速でマウスを動かしたときに限っては,ネガティブアクセルが発生しやすかった。【○】
●Razer Scarab(プラスチック系)
抵抗感がある。高速で動かしたとき,ネガティブアクセルのような反応を感じることがまれにあった。ただ,再現性を確認できなかったため,「ネガティブアクセルが発生する」とは断言できない。【○】
●Razer Sphex(プラスチック系)
「サラサラとした」と表現するのが適切かどうか分からないが,わずかに抵抗感がある。操作自体は快適に行える。【○】
●Razer Vespula(プラスチック系,両面)
両面とも良好な操作感を得られる。これといった問題は感じない。【○】
●SteelSeries 9HD(プラスチック系)
抵抗感は感じるが,操作性自体はよい。【○】
●SteelSeries QcK(布系)
布系パッドにしては若干重い抵抗感がある一方,的確なエイミングができた【○】
●ZOWIE G-TF Speed Version(布系)
滑りは良好。ただし,高速で動かしたときに盛大なネガティブアクセルが発生した。ローセンシで操作をするプレイヤーだと,かなりの“ハードモード”になるだろう。【○】
●ZOWIE Swift(プラスチック系)
ザザザとした抵抗感がある。その分,的確なエイミングができた。【○】
多くのマウスに悪夢を見せてきたDHARMAPOINTの「DRTCPW35GR」は,EC2 eVoでも強烈な相性問題を生じさせた。また,EC2 eVoと同じくZOWIE GEAR製の「G-TF Speed Version」でまさかのネガティブアクセルが発生した点も指摘しておきたい。
ARTISANの「疾風SOFT」とRazerの「Razer Scrab」で感じられたネガティブアクセル(風の挙動)は「こうすると発生」とまでは言えないため,テスト環境依存の現象かもしれないが,注意はしておいたほうがいいとは思われる。
リフトオフディスタンスはご覧のとおり,今回テストした15枚のマウスパッドすべてで2mm以内に収まっている。1.5mmという公称値内で厳密に収まっているかどうかは断言できないものの,優秀だとは評してよさそうだ。
なお,直線補正は「ない」と公式に発表されているが,これは「」と同じセンサーを採用しているためだろう。実際に操作してみても補正は無効化されているか,限りなく少ない印象を受ける。
「ペイント」を使い,EC2 eVoで図を描いてみたところ
IE3.0クローンとしてかなりのレベルにあるEC2 eVoカスタマイズ性の低さが気にならないなら買い
初期不良品だった貸し出し機を分解してみると,本体カバー裏でプラスチックが一部削れてしまっていた。スクロールホイールが干渉したときに削れたのだろう。これに気づかなかったら,大変ネガティブなレビューを掲載するところだった ……なぜレビューの掲載が遅れたのかの種明かし的な話をすると,実は,本製品のレビューにあたって,ZOWIE GEARの販売代理店であるマスタードシードから貸し出された個体が,いわゆる初期不良品だったのだ。最初はそれに気づかず,スクロールホイールについてネガティブな内容を多分に盛り込んだレビュー記事を仕上げたのだが,最後にもしやと思って分解してみたら,スクロールホイール部のプラスチック製カバーが削れてしまっていたというオチである。
そこで,店頭でも1台購入してきて,すべてのテストをやり直した。今回お届けしたのは,店頭で購入してきた製品版での評価になっている。
ともあれ,他社製品でよく見られるような設定用ソフトウェアや,カスタマイズ可能な追加といったギミックがほとんど何もないのは人を選ぶだろう。個人的には,「USBコネクタの抜き差し」というレポートレート変更法を面倒だとも感じる。ただ,俗にいう「IntelliMoues Explorer 3.0クローン」としては上々であり,EC2でZOWIE GEARが到達したかったのであろうレベルに,EC2 eVoはようやく到達した印象を強く受けるのも,また確かだ。
また,ネットカフェやオフライン大会など,自宅以外でゲームをプレイする機会の多い人にとっては,面倒なセットアップや専用ソフトウェアのインストールが不要というのも,おそらくメリットになると思われる。
製品ボックス 実勢価格は6500?7000円程度(※2012年5月24日現在)で,少なくとも安価ではないが,「この値段を出して買うに値するものか?」という問いには,「値する」と回答していいように思う。とくに,現在筆者が愛用しているマウスパッド「ARTISAN 隼XSOFT」との相性はバツグンで,FPSだけでなく他のジャンルのゲームでも快適に使用できた。
本稿の中盤で述べたとおり,筆者は長年,ゲーム用のマウスとしてSteelSeries Ikari Opticalを使用してきているが,いよいよ乗り換えるときが来た気がしている。レビュー用の貸し出し機が初期不良というあたり,品俟芾恧摔喜话菠肖毪郡幔?strong class="bold4">購入したらまずは,上で掲載したムービーと動作音を比べてみてほしいと思うが,それはそれとして,価格と,専用ソフトウェアによる細かな調整が行えないという点が気にならなければ,買って損はしないはずである。
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